神輿の熱気を支える、小さな名脇役 ― 箱長の神輿枕ものがたり 

春になると、浅草の街は少しずつ祭りの熱気に包まれます。

神田祭、三社祭、鳥越祭、下谷神社大祭……。

威勢のいい掛け声とともに神輿が町を練り歩く姿は、東京の下町ならではの風景であり、多くの人を魅了する日本の伝統文化です。

そんな祭りを陰で支えているのが、1910年創業の祭用品専門店「浅草中屋」さんです。

法被や帯、足袋、手拭いなど、祭りに欠かせない品々を扱い、多くの担ぎ手から信頼されている老舗です。

箱長では、その中屋さんへ桐製の神輿枕を納めています。

神輿枕とは、神輿を担ぐ際に肩へ当てて使う道具です。特に背の低い女性が神輿を担ぐ際、肩の高さを調整して担ぎやすくするために使われることが多く、祭りには欠かせない道具の一つです。

素材には桐を使用しています。

桐は軽くて丈夫なうえ、肩への負担が少なく、長時間使用しても疲れにくいため、神輿枕には最適な素材です。小さな道具ではありますが、担ぎ手が安心して祭りを楽しむための大切な役割を担っています。

中屋さんとのお付き合いは、およそ10数年前に始まりました。

きっかけは、一人のご縁でした。

以前、箱長で働いていた方が中屋さんへ就職され、「神輿枕なら箱長が作れる」と紹介してくださったことが始まりです。

そのご縁からお取引が始まり、以来、毎年約200個程度の神輿枕をご注文いただいています。そして最近では、その数も少しずつ増えてきています。

神田祭、鳥越祭、下谷神社大祭、そして三社祭が近づくと、中屋さんでは神輿枕が特によく売れるそうです。

祭りを心待ちにする担ぎ手の皆さんの姿を思い浮かべながら、箱長では一つひとつ丁寧に神輿枕を作り続けています。

私は、祭りの主役は神輿を担ぐ皆さんだと思っています。

しかし、その熱気あふれる祭りは、多くの職人たちの仕事によって支えられています。

法被を仕立てる職人。

足袋を作る職人。

提灯を作る職人。

神輿を修理する職人。

そして、担ぎ手の肩を支える神輿枕を作る私たち。

それぞれの技と想いが一つになって、初めて祭りは成り立っているのです。

箱長が作る神輿枕は決して目立つものではありません。

それでも、その小さな道具が担ぎ手を支え、祭りをより安全に、より楽しくするお役に立っていると思うと、ものづくりの喜びを改めて感じます。

浅草という町で商売を続け、老舗同士が信頼で結ばれ、ご縁が新たなご縁を生みながら今日まで歩んできました。

これからも箱長は、一つひとつ心を込めたものづくりを通して、祭りの文化、そして浅草の伝統を支えていきたいと思います。

祭りの日、担ぎ手の笑顔の陰には、多くの職人たちの技があります。箱長の神輿枕も、その一つ。これからも浅草の祭り文化を支えるものづくりを続け、祭りを支える職人の一人であり続けたいと思います。