導かれるように —— 箱長へ辿り着いたご縁

3月23日、夕方17時。
店に一人の女性がいらっしゃいました。

「昨年9月、札幌のデパートに来ていた方はいらっしゃいますか?」

少し緊張した面持ちで、そう声をかけてこられたのは、50代半ばほどの品のある女性でした。

お話を伺った瞬間、私ははっとしました。

——覚えている

昨年9月、札幌の物産展。
箱長の仏壇の前で、じっと見つめていた女性。

その方は確か、
「主人がもう長くないかもしれなくて……」
とおっしゃっていました。

けれど、まだその時はご主人がご健在。
「今、注文するのは少し早い気がして」と、
最後まで迷われながら、その場を後にされたのです。

目の前の女性は、その方の娘さんでした。

「実は……亡くなったのは父ではなく、母なんです。」

その言葉に、胸が詰まりました。

年末に突然、お母様が亡くなられたとのこと。
そして娘さんは、お母様が箱長の仏壇を気に入っていたことを知らず、
旭川で仏壇を注文されたそうです。

ところが後日、知人の方からこんな話を聞きます。

「お母様、江戸の物産展で見た仏壇がとても素敵だって、気に入っていたよ。」

その一言で、すべてが変わりました。

娘さんはデパートに問い合わせ、
そこから箱長を探し出し、
こうして浅草まで来てくださったのです。

すでに注文していた仏壇は、キャンセルして——。

その話を聞いたとき、思わず鳥肌が立ちました。

半年前、
本来であればご主人のために考えていた仏壇。

けれど、その場所に入ることになったのは、お母様ご自身。

そしてそのご主人様は、今もお元気でいらっしゃる。

まるで何かに導かれるように、
娘さんをここへ連れてきた——
そんな不思議なご縁を感じずにはいられませんでした。

きっとお母様は、
「やっぱりあの仏壇がいい」
そう思っていらっしゃったのかもしれません。

遠く札幌から浅草まで。
一本の見えない糸に引かれるように辿り着いたこのご縁。

箱長の仏壇が、
その想いを受け止める場所になれたことを、
心からありがたく思います。

ものづくりをしていると、
時折、こうした“人の想いに導かれる瞬間”に出会います。

それは偶然ではなく、
きっと必然なのだと、改めて感じた一日でした。