家業を継いで30年。死ぬまで日々修行!

今年の10月で、家業を継いで30年になります。

振り返れば、あっという間だったような気もしますが、30年という月日の中には、本当にいろいろなことがありました。

この仕事を始めた頃、右も左も分からなかった私に仕事を教えてくれたのは、今も箱長で働いてくれている職人さんです。

彫刻刀の持ち方から、桐の扱い方、彫り方まで、一つひとつ教えてもらいました。

私たちの仕事では、10本ほどの彫刻刀を使い分けます。

桐という木は柔らかいイメージがありますが、実際に彫ってみると木目が強く、なかなか思うようにはいきません。

30年やってきた今でも、「今日はうまくいかないな」と思うことがあります。

だからこそ、この仕事には終わりがないのだと思います。

死ぬまで日々修行。

30年続けてきて、今はこの言葉を本当に実感しています。

そして、私自身も今でも職人として、各地のお客様からご注文いただいた商品を作っています。

鹿児島、岡山、札幌、大阪、広島……。

百貨店の催事などで直接お話をして、ご注文いただいたお客様のお顔を思い浮かべながら、

浅草に戻って彫刻刀を握ります。

「あのお客様は、この柄をとても気に入ってくださったな」

「出来上がったら、どんな顔をしてくださるだろう」

そんなことを考えながら作る時間が、私は好きです。

機械で大量に作る商品とは違い、一つひとつ、人の手で作る。

そこには、作り手の気持ちも、お客様との出会いも残っていきます。

30年前、職人さんから教わった技術を、今度は私たちが次の世代へつないでいく。

明治7年から続いてきた箱長の仕事も、きっとそうやって受け継がれてきたのだと思います。

30年は一つの節目ですが、まだまだ途中です。

今日も浅草で桐と向き合い、彫刻刀を握る。

これからも、お客様の顔を思い浮かべながら、一つひとつ心を込めて作っていきたいと思います。

死ぬまで日々修行。

これからも箱長を、どうぞよろしくお願いいたします。