浅草.箱長 × 京都.柊家 老舗が老舗を選んだ、一つのお針箱物語   

今から20年ほど前のことです。

一本の電話が箱長にかかってきました。

「京都の柊家ですが、オリジナルのお針箱を作っていただけませんか。」

電話の相手は、京都を代表する老舗旅館「柊家」さんでした。

文政元年(1818年)創業、200年以上にわたり「来者如帰(らいしゃにょき)」──「お客様に我が家のようにくつろいでいただく」というおもてなしの心を守り続け、多くの文化人や文豪にも愛されてきた名旅館です。

その柊家さんからのご依頼は、とても素敵なものでした。

「各お部屋に置く、お針箱を作りたい。」

さらに、

「売店でも販売できるような、柊家だけのオリジナル商品にしたい。」

そんなご相談でした。

もちろん、私たちの返事は一つ。

「ぜひ、やらせてください。」

こうして始まったものづくり。

デザインは、針仕事を象徴する「糸切り鋏」と「糸」。

箱長ならではの木目込みを施し、小さなお針箱の中に京都らしい上品さと、日本の伝統美を込めました。

完成したお針箱は、宿泊されるお客様のお部屋に置かれ、さらに柊家さんの売店だけで販売される限定品となりました。

箱長では販売していません。

だからこそ、そのお針箱に出会えるのは柊家さんだけ。

旅の思い出とともに持ち帰っていただける、特別な一品です。

私は仕事をしていて、いつも感じることがあります。

老舗は、ただ長く続いているだけではありません。

「ここなら安心して任せられる。」

そう思っていただける信頼を、何十年、何百年とかけて積み重ねてきたからこそ、次のご縁につながるのだと思います。

京都の老舗旅館と、浅草の老舗工芸店。

離れた町で、それぞれの歴史を歩んできた二つの老舗が、一つのお針箱を通してつながりました。

これからも箱長は、人とのご縁を大切にしながら、日本の伝統文化を次の世代へ伝えていきたいと思います。

一つの商品には、一つの物語があります。

そして、その物語こそが、箱長にしか作れない宝物なのです。